金利上昇メリットとデメリット

日本はインフレがここ数十年なかった規模で進行中です。
このような事態になっている主要因は、円安です。
円安を止めるには利上げをしなくてはなりませんが、利上げをすると、どのような影響があるのか、考えてみましょう。


利上げのデメリット


【ローンの金利が上がる】

家を購入する時にローンをしますよね。このローンは現在、変動金利型では非常に低金利に抑えられており、ローン控除を使うと、逆に支払い利子よりも多くの補助金を受けられるという、いわゆる「逆ザヤ」状態のかたも結構いらっしゃるようです。
しかし、金利が上昇すると、この変動金利も上昇します。
つまり、月々の返済が家計に与える影響が一気に増加します。
そして、これから金利が高くなることで、ローンをして家を建てようとする人も減りますから、不動産会社を中心に売り上げが落ち込み、建材メンテナンスなど、すそ野の関連企業も含めて、業績が悪化します。

【国債の金利も上がる?】

現在、日本国債は1000兆円を超えたと言われています。
これは、日本国民の貯蓄財産に匹敵する量であり、GDP比では、ハイパーインフレを起こしたベネズエラに次ぐ最悪といってもいい水準です。
ゼロ金利政策下では、年の返済額は20兆~30兆円ですが、金利が上昇すると返済額が膨らんでデフォルトする可能性があります。

【預貯金にお金が回る】

貯蓄した時の金利が上がる(年利2~3%となると、侮れない)ので、貯蓄に回す人が増えます。
一見良いことのようにも思えますが、貯蓄が増えるということは、その分消費が減るということです。
消費が減るということは、ものを販売する産業が儲からないということを示していますので、景気が悪化します。

※他にもありますが、代表的なデメリットとしては、このようなものが考えられます。
利上げを行なうと、経済に悪影響があるのは間違いありませんので、政府日銀はその点を強調して緩和路線をとっています。
しかし、本当に心配なのは、膨らみすぎた国債の利払いが増幅することと、それに伴う円のデフォルトが起こるリスクがあるということです。


利上げのメリット


【円高に振れる】

今の円安は、日米の金利差を主要因として、起こっています。
そして、円安が起こることで、輸入品の値段があがり、物価が上がっています。
従って、日本も金利を上げた場合、円高に振れることになります。
つまり、物価の上昇が落ち着くということです。
ただし、ウクライナ戦争の影響も多少ありますし、仮に金利をすぐ上げて、円高に振れたとしても、物価の上昇が落ち着くまでには半年程度かかるでしょう。
逆に言うと、何もしないと、もっともっと物価が上がり続けるということです。

【☆金利を下げる余地が出来る☆】

とても重要なことなので☆をつけました。
短視眼的に物事を考えると、確かに利上げは経済を冷え込ませ、失業者も増やしてしまうかもしれません。
ただし、そうなったらなったで再び利下げをすればいいのです。
でも、ゼロ金利下だとしても、マイナス金利にすればいいだけなのではないか、と思うかもしれませんね。
マイナス金利が進行すると、どうなるか想像してみてください。
あなたは銀行に預金していると、どんどんお金が銀行に吸い取られていきます。
引き落としやカード払いに必要な分を除いて、タンス預金にしたほうが、お金が減らずに済みます。
ですので、銀行預金はどんどん引き出されて、銀行からお金が無くなっていきます。
逆に、お金を借りれば借りるほど、お金が増えていきます。
つまり、銀行はお金を貸し出せば貸し出すほど損します。
そうなったら当然銀行は貸出しません。
個人が預けている預金は抜かれ、貸し出しも出来ないとなると、銀行の業務は破綻しますよね。
ですので、マイナス金利はごく限定的にしか出来ません。
ところが、金利を上げると、その分下げる余地も生まれるので、インフレ局面では金利を上げ、景気が悪いことがはっきりすると、インフレ率と相談して金利を下げる
そういった戦術を取ることが出来ます。
従って、欧米の取っている金融政策は至極真っ当であり、日本も素早く判断して、これを真似するべきだと思います。
ちなみに、日本のインフレ率が欧米に対して、大したことないという意見は、欧米ほど賃金が上がっていない以上、相対的に影響は大きいので、やはり対処すべきです。

【銀行の業績が良くなる】

金利が上がると、銀行の収入が増えます。
なぜなら、貸し出し金利が増えるからです。
貯金に対する、利息も増えるので、一見トントンのように感じますが、貸出金利が増えるほど、その差が大きくなるので、銀行の業績も改善します。
ただし、あまりに金利が上昇して、貸出先の焦げ付きや倒産に直面すると、銀行も危機を迎えますから、金利の急上昇よりも緩やかな金利上昇が望ましいと言えます。
従って、もし、金利が上がりそうだな、という局面では、銀行株に投資するのもいいかもしれません

【日銀の貨幣発行が止まることで、円のゴミ化を防げる】

5日間で約7~8兆円もの紙幣を発行し、連続指値オペを行なった日銀。
物凄い量です。
このままこれを続けると、本当に円はゴミになり果てます。
極論すると、紙幣はただのホログラムなどを施した紙にすぎません。
それに価値を与えるのは、保証する国家の国力・軍事力・経済力であり、つまりは信用です。
しかし、どんどん紙幣を発行すると、紙幣の希少性が失われ、信用が損なわれます。
その結果、対外的に円の価値が下落してしまい、輸入物品がどんどん値上がりして、我々、庶民の生活は苦しくなります。
輸出が好調とか、そんなことはどうでもいいのです。
どうせ、儲けた企業は配当で株をたくさん持っている社長自身と、海外のファンドに一生懸命日本人が働いて稼いだお金をまき散らすだけで、給与を中々上げてくれません。
だから、どうせ給与が上がらないなら、物の値段が上がらないに越したことはないのです。
モノの値段が上がるなら、給与を上げるのは絶対です。
しかし、そこまで考えてくれるオーナーが今の日本にどれだけいるのか、やりたくても出来ないオーナーも含めて、厳しいんじゃないでしょうか。

※まとめ

短期的にみると、金利上昇は経済の冷え込みや失業率の上昇を生み出します。
しかし、中長期でみると、利上げを行なうことで、インフレを抑える効果が期待でき、しかも利上げした分だけ、再び利下げをする余地が出来ます。
このように、物事を短いスパンでみるのではなく、長いスパンで見ると、利上げしたほうがいいのではないかと考えられます。
このまま金利が低い状態が続くと、今も厳しいですが将来的に更に厳しい状況になるのを覚悟しなくてはいけないでしょう。