国債利率0.4%突破の衝撃

最近、何度も日本の10年債利回りが0.4%を突破しているのをご存じでしょうか。
2022/6/16から6/17にかけて、一時0.45%まで利率が上がり、その後も毎日のように0.4%前後まで利率が上がっています。
これはどれほど危ないことなのか、考えていきましょう。


連続指値オペの利率は0.25%なのに突破される理由


日銀は10年債利回りを0.25%以下に固定するために、これを超えそうな場合、連続指値オペという形で国債を購入して利率の上昇を抑えています。

では、なぜ連続指値オペをしているにも関わらず、何度も0.4%を超える利率がついてしまっているのでしょうか。

連続指値オペをしていなかったのでしょうか。

そうではありません。

実は、日銀は日中は連続指値オペを実行して、利率が0.25%以下になるように、大量の国債を買っていましたが、業務をしていない夜間に海外で国債を売られて、利率が上がっているのです。

それも毎日のように大量の国債を売られて、そのたびに0.4%に達して、それを日銀が営業時間になると買い戻すということを繰り返しています。

これだけ聞くと大したことないように感じるかもしれませんが、普通あり得ないことです。


日銀が1週間(営業日5日間)で買い入れた額は約8兆7千億円


6/13~17までのたった5日間で、日銀が国債を買い入れた金額は8兆7千億円

です。

ちょっとピンと来ないかもしれませんが、2021年度の日本の税収は約65兆円(これは見込みの数字)で、歳出は107兆5964億円です。

日本の総資産は約2000兆円と言われており、その預金額は1000兆円超とも言われています。

これらは長い年月をかけて築かれた資産です。

それが、たった5日間の間に日銀は8兆7千億円ものお金を作り出したことになります。

日本の年間税収と歳出の平均の約10分の1にあたる金額をたったの5日間で刷りました。

当たり前ですが、こんなことしていたら日本円の価値はどんどんなくなってしまいます。

つまり、円安は進行します。


円安が進行すると困るのは、庶民


なぜ、庶民が困るかというと、日本は食料自給率が低く、多くの食材を海外からの輸入に頼っているからです。

ですので、自国通貨の価値が減れば減るほど、庶民は苦しくなります。

これが高級品だけであれば、買わなければいいだけですが、食品は毎日どんな人も消費します。

従って、食料自給率の低い日本の庶民は円安の打撃をより受けやすいということがいえます。

ちなみに、食料品の値段は、公表される消費者物価指数(インフレ率)に含まれていません

なぜかというと、例えば魚や野菜は天候や条件によって、取れ高が変わり、値段の変動が激しいため、消費者物価指数に含まないのが慣例だからです。

発表される消費者物価指数(インフレ率)以上に食品がどんどん値上がりしているように感じるのはそのためで、実際に食品はもっともっと値上がりしています

これらの主要因は、円安であり、副要因にウクライナの戦争などがあります。

※まとめ

貨幣の価値を決めるのは、国家の信用です。

国家の信用とは、軍事力や経済力、その他諸々の価値によって相対的に決められており、それによって国際的なレートが決まります。

もし、国債をいくらでも発行しても大丈夫、という考えの方がいたら、それは間違いです。

こう考えてみてください。

世界にたった1つのピンクダイヤをあなたは持っています。

でも、同じものが10000個見つかって、他の人もそのピンクダイヤを手に入れた時、あなたが持っているピンクダイヤは果たして以前と同じ価値だと言えますか。

貨幣も同じです。野放図に増やせば、価値がどんどん減っていきます。

あなたが海外の人だとして、0.25%に金利固定された今の日本国債を欲しいと思いますか。

どんどん増刷される円を買いたいですか。

少なくとも、海外の人はいらないと思うから、夜間に日本国債が大量に売られて、金利が上がっているということを忘れないでください。

そうして、円安になりインフレが加速しています。

これでも、日銀の政策が本当に正しい、と言えますか。

それに関連して、金利が上がることによる弊害とメリットについてもそのうち解説したいと思います。