日産の配当は復活するか?②

前回、【日産の配当は復活するか?①】で、日産が無配に陥った過程をお話ししましたが、今回はこれから配当が復活するのかどうかについてを書こうと思います。

結論から言いますと、日産の配当はいずれ復活すると思います。
ただし、利回り5%を超えるような元の水準まで戻るかどうかはかなり怪しいです。
その理由を以下解説していきます。


【日産の配当と過去の動き】



(出所:日産ホームページ配当情報)

上の図は、日産の配当がリーマンショック後から、どのように推移したかのグラフになります。

2018年度は配当金57円、配当利回りは実に6%を超えていました。
まさに配当株の王様でした。

では、実際に配当が復活するのか、そして、配当金は2018年の水準まで復活するのか、について考えていきましょう。

 


【リーマンショックと今回の無配へ至る過程との違い】


リーマンショックは、サブプライムローン問題という不動産にレバレッジをかけた商品にほぼ無担保でどんどん投資出来るという、いわば色々な形や大きさの歯車が組み合わさった暴走機関車があって、その歯車の一つが融資の焦げ付きによって取れて、そこから一気に全体も瓦解していったようなものです。
そして、その出来事が世界の金融市場を大混乱に陥れました。

2008年ごろ、日産はこの煽りを受けて、業績が悪化し、無配に陥った訳ですが、当然のことながら、日産に責任があってこのような事態になった訳ではありませんよね。

しかしながら、今回の株価の下落と無配へ陥った過程は、

ゴーン氏が逮捕される。

その後のゴタゴタで業績が下がる。

定額充電サービスの廃止

コロナショック

という流れで起きています。

❶~❷は言うまでもなく、日産のガバナンスの甘さが引き起こしたことになります。

❸も長期的に考えると悪手だと言わざるを得ません。
新しい経営陣が長期的なビジョンを持っていないのではないか、最悪ゴーン体制を否定したかっただけではないかと疑われかねない一手でした。
その後のテスラの伸長や、世界のSDGsへの流れの加速を見ると、逆流して短~中期的な利益を取りに行ったことは投資家として新経営陣に大きな不安を抱かせました。

❹は、直接の責任はありませんが、コロナショックが起こったことで生産台数を絞ったため、契約している半導体メーカーの車載用の半導体生産レーンを一部手放してしまったことが後から考えると、現在の車の生産台数を回復できない要因になってしまっています。
(※車載用半導体は他の半導体に比べて利益率が悪いと言われており、一度、半導体メーカーの生産レーンを手放すと、他の機器の半導体にレーンをとられて簡単には戻ってこないため。)

という訳でリーマンショックの場合は、世界経済の持ち直しとともに、日産の業績も順調に回復しましたが、今回の場合は、日産自体が巻き起こしたことですので、今後の業績の回復と復配を考える際の懸念材料になります。

 


【配当の流れとルノーとの関係性】


ゴーン氏は逮捕前、日産の会長兼CEOであると共に、ルノーのトップでもありました。

ルノーは2021年9月現在、日産の総株式発行数の43.4%にあたる18億3183万株を保有しており、仮に2018年の配当金57円が支払われたとすると、1年間に課税前の状態で1044億1431万円がルノーに入る計算になります。

日産の2018年度の経常利益は、5464億9800万円なので、ルノーの持ち株数がその時も同じだったとすると、実にその5分の1近くがルノーに支払われていたことになります。

また、ゴーン氏自身の持ち株もありましたから、増配するということは、ゴーン氏やその周辺にとっても大きな利益となっていたことを表しています。

従って、日産とルノー両社のトップであったゴーン氏が去った後、日産が復配や増配するには、ルノーとの関係性が非常に重要になります。

恐らく、日産自体は業績が良くない中、積極的な増配には中々踏み切れない状態だと思われます。

一方ルノーは、大株主として増配するように圧力をかけるでしょう。

以前は、ルノーのトップでもあるゴーン氏が主導して増配していたと考えられますが、現在はそのゴーン氏がいなくなったため、仮に業績が上向いても以前ほど積極的に増配するのは考えにくいです。

<まとめ>

以上のことから、最初に申し上げた通り、

復配はいずれ果たす可能性が高いと思われますが、2018年のような配当利回りを期待するのはちょっと難しい

と思われます。

また、仮にいずれ配当利回りが高くなったとしても、そこへ至るまでにかなり年月がかかることを覚悟しなければならないでしょう。