日本株急落の原因と今後

日本では、9月29日に岸田新総裁が誕生して、10月4日に新政権が発足しました。
しかし、残念ながらご祝儀相場とはならず、日経平均は9月の高値から3000円近く下落しており、マザーズもつられて大きく下落しています。
どうしてそのようなことになったのか、原因を考えてみようと思います。

 


10月の日本株急落の原因


(出所:TradingView)

菅首相退陣決定後、新総裁への期待で株価は上がった

図の①を見て分かる通り、自民党に新しい首相が誕生するということで、9月に株価が上がりました。

これは、総裁候補の特定の誰かに対しての期待で上がった、ということではありません。
ここで思い出していただきたいのですが、そもそも支持率の下がった菅政権のまま総選挙に臨むと自民党が与党から野党に転落してしまう可能性がありました。

なぜ、自民党が与党だと投資家が安心かというと、それは日銀の黒田総裁と二人三脚で株価対策を推し進めてきた安倍政権の流れが、少なくとも野党よりは受け継がれるのではないか、という期待があったからです。

そこで、総裁が新しい顔に変わることで、その政策の是非はともかくとして、選挙を有利に進めることが出来る、という安心感が海外投資家を中心に広まり、安心買いが進みました。

総裁選の過程で、高市氏の金融課税政策など、どうやら候補者は株価対策にそれほど熱心ではないことが分かってきた

図の②の部分の下落は、そういった新総裁誕生に対する期待からの現実への揺り戻しで株価が下がってきました。

有力候補の一人であった高市氏は金融課税を20%から30%に引き上げる政策を掲げていました。
これは、もっと単純に言うと、株の売却益と配当に対する課税を1割増やしますよ、ということで、当然株式市場にとってはマイナスになります。

恐らく、実際に導入しようとすると、散々国民にNISAやiDeCoを勧めてきておいて、手のひらを反すというのは相当な反発を受けるので、難しいのではないかと思いますが、政権中枢にいる政治家がそういう考えを持っていること自体が、株式市場にとってプラスではないと言えるでしょう。

また、他の候補者も株価対策に関しては、あまり積極的な姿勢が見られず、むしろ富の分配に主眼が置かれている候補者が多かったと思います。

そして、実際に岸田新総裁が誕生したわけですが、多くの記事に書かれている通り、組閣のメンバーを見ても、方向性が分かりづらく、発言内容からしても株価を積極的に上げていくような政策は期待しづらい状況で、投資家に失望されているのが現状だと思います。

アメリカのデフォルトリスクと金利の上昇

アメリカは、債務上限凍結を共和党の反対で採決できなかったため、財務省の手元資金が枯渇しかけており、イエレン財務長官によると10月18日にはその手元資金が枯渇すると言われています。

仮に、手元資金が枯渇しても、ただちにデフォルト(債務不履行)とはならず、政府機関の一部を閉鎖して、債務上限凍結に関する合意を与野党で目指すことになります。

同じような事態は、2011年8月のオバマ政権時代を含め、複数回起こっており、そのたびに、ギリギリになってデフォルトは回避されてきたので、おそらく今回も政府機関の一部は閉鎖される可能性があるものの、デフォルト自体は回避されるのではないか、というのが大方の見方になります。

なぜなら、現在反対している共和党の議員も実際にデフォルトとなると、自身の資産が打撃を受ける上に、有権者からの厳しい反発が予想されるからです。

ただし、前回の2011年の時は、アメリカ国債の格付けが下げられて、金融市場が混乱したので、そういったリスクがあることは覚悟しなければならないでしょう。

また、FOMCによるテーパリング見通しや米国10年債利回りの上昇は株価にとってマイナスなので、これらが今後も継続していくと考えると、株価への下落圧力がかかることになります。

中国広大集団の破綻リスク

中国広大集団は、資産はあるものの、手持ちの現金が足りず、現在もデフォルトリスクを背負った状態が続いています。

中国2位の約30兆円規模の大きな不動産関連企業であり、その企業が破綻するとどこまで影響が及ぶのか分かりません。

現在、中国政府の指導のもと、保有株式の売却などで、当座の現金を確保し、債務支払いを進めている状態ですが、支払いはこの後も12月にかけて次々に期限を迎えるため、いつどうなるかは、いまだに予想がつかない状態です。

仮に破綻したとしても、リーマンショックほど世界への影響はないだろうと言われていますが、今後も先行き不透明な状態が継続すると考えられます。
(※リーマンブラザーズは破綻前の2007年の総資産が約6910億ドルであり、その額は広大集団の約2.5倍でした。また、サブプライムローン問題も複雑に絡んで、世界の信用不安をあおりました。その影響は株価の主要指数を1~2年のうちに半分~三分の一にまで大暴落させました。)

原油先物の高騰によるインフレリスク

原油の増産が見送られたことによって、原油先物価格が上昇しており、それが短期間にインフレを誘発して、市場に悪影響を与えるのではないかと、懸念されています。

(出所:TradingView)

 


世界の流れと日本株の今後


10月31日の解散総選挙の結果次第

岸田新政権が誕生したわけですが、すぐに10月中に解散総選挙があるということになります。

短期間にとんでもない不祥事でもない限り、おそらく自民党は与党を維持すると思われますが、結果が出るまで株式市場も様子見という状態が続くでしょう。

円安が進んでおり、一部輸出関連企業はその恩恵を受ける

目下、1ドル111円台にまで、円安が進んでおり、円安傾向が続く限り、総合商社などの輸出関連企業は、その恩恵を受けて、下落局面でも持ちこたえたり、あるいは逆に上昇することも考えられます。

ただ、自動車関連企業については、半導体など部品の供給が安定する目途が立っていないことが問題となるため、注意しましょう。

また、大型企業では中間配当直後で、次の期末配当までは相当日数があることから、若干株価が下がりやすい部分もあることは頭の片隅に入れておくといいかもしれません。

アメリカのデフォルトは回避されると思われるが、実際に結果が出るまで分からない

これもしばらくは不安が続くと思いますが、回避が決定すればダウは反転上昇する可能性が高いです。

日本株もダウやナスダックの影響を受けますので、その日は上がる可能性が高いと思います。

広大集団の問題に目途がつくかどうか

デフォルトが回避される目途がつくか、それとも実際に耐え切れずにデフォルトしてしまうのか、によって大きく結果が変わります。

中国政府は広大集団の破綻を望まない一方、現在の破綻危機に陥った直接の原因を作ったのも中国政府なので、いったいどっちに転ぶのか私も予想不可能です。

新しい情報や今後の動きに注意しましょう。

<まとめ>

現在、日本、世界の両方で様々なリスクが顕在化しており、株式市場にその影響が出ています。

コロナショック後、世界各国での大規模な財政出動により、株価は1年半の間に大きく回復、上昇しました。

それは月足で見れば、明らかに急上昇しているのが分かるレベルですので、もしかすると、ここらへんで大きく調整する可能性もあります。

一方、仮に調整したとしても、米国株などはそのたびに力強くよみがえってきた歴史がありますので、低迷した時も持ち続けることが出来れば、資産を増やす結果につながるかもしれません。

日本株に関しては、岸田新政権の政策と、解散総選挙の結果次第ということになるでしょう。

特に、経済産業相、経済再生相、経済安全保障相と経済〇〇大臣が3名もいることが何を意味するのか、が今後株価がどうなってくるかに関わってくるような気がします。

【※重要な情報が抜けていたので追記】

総裁選時の高市氏の政策の一つとして本文中で紹介した

金融所得課税の増税(株の売却益や配当に対する課税を20%から30%に増税する案)が、岸田政権の政策の一つとして、検討されている

ことが分かりました。

10/05の日本株の大きな下げは、そういった課税を嫌った投資家の売りによるものが大きいと思いましたので、改めて追記させていただきます。

なお、実際にどのような形で導入を検討するのか、あるいは実現するのかは現段階では分かりませんが、ネガティブな情報であることは間違いないので、今後の株価の動きに要注意です。