大戦は民主主義への失望で起こる

皆さんは、第2次世界大戦のそもそものきっかけをご存じでしょうか。
当然、1つではなくいくつかあるのですが、そのうち大きなものに1929年に始まった【世界恐慌】が挙げられます。

有名な靴磨きの少年の逸話も世界恐慌前夜の1929年夏のものです。


第2次世界大戦はいかにしておこったか


❶第1次世界大戦でドイツが敗北し、多額の賠償金を課せられたことと戦争の反動で、ドイツ人は自信を失っていました。
また、インフレが起こり、日々の生活にも困る状況でした。

❷そういった中、アドルフ・ヒトラー率いるナチス党が、ドイツの政権を狙いますが、当初は色物として見られており、相手にされていませんでした。
熱狂的なごく一部の支持者を突撃隊として、第1次世界大戦のエースパイロットで貴族階級出身だったヘルマン・ゲーリングに徹底的に鍛えさせ、ミュンヘンでクーデターを起こします。
しかし、このミュンヘン一揆は即座に鎮圧され、ヒトラーは投獄されます。

❸ヒトラー投獄後の1929年世界恐慌が起こり、世界経済は大混乱に陥りました。
その影響はその後1930年代後半まで続きました。
特にドイツでは、その日買うパンに困るほどのハイパーインフレに陥ります。
その結果、民主主義に対して失望する民衆が一気に増えました。

❹選挙で議員を選ぶ民主主義は無力ではないか、強い指導力こそこれを解決する唯一の手段ではないか、という発想が更に広まります。
ドイツではアーリア人種こそ世界を主導する1等民族で、ユダヤ人を敵とみなすナチス党の考え方は、第1次世界大戦で粉々に砕け散った民衆のプライドを強く刺激します。
しかも、生活が極貧で餓死者まで出ていたため、いっそ死ぬくらいならナチスを支持してみようという機運が生まれます。

❺当初、欧米にとって共産党こそ敵であり、ナチスはむしろ対抗馬と見られていたので、欧米諸国もナチスに対して静観していました。

❻すでにイタリアでは、ベニート・ムッソリーニ率いるファシスト党が小麦や食料の増産を成功させ、一党独裁を実現していました。
それに、ヒトラーは強くあこがれ、ドイツの選挙で最大野党となった後、更に第1党に躍進、その後、議会を突撃隊で威圧しつつ、独裁を強引に宣言し、自身は総統に就任します。

❼こうやって生まれたナチスドイツはその後、ラインラント進駐など、欧米が戦争を回避する交渉と努力を続ける中で、領土を着々と増やし軍備も整えていきます。
そして、ポーランド侵攻からの第2次世界大戦へとつながっていったのです。


当時の民衆はナチスを支持していたからこそ独裁になった


今だから、過去を振り返って、ナチスは悪とか言うのは簡単ですが、当時のドイツ民衆にとってはまさに救世主のような存在だったのです。
これはつまり、現在に当てはめると、今後もし世界経済が停滞したり、ハイパーインフレが起こるような状況になると、似たようなことが起こる可能性が高いことを意味します。

また、現在すでにフランスなどでは、いわゆるマリーヌ・ルペン氏率いる極右と言われる政党が第2党として、躍進しています。
ということは、すでに民主主義に対してリベラリズムが旺盛な欧米ですら、失望し始めていると言って良いでしょう。

今後、世界経済がスタグフレーションの加速で混乱に陥ると、更にその傾向が強まるものと予想されます。

日本も仮に今後インフレが加速し続ければ、そういった政党が躍進する可能性があります。

極右だから、独裁に走るとは言えませんが、基本的に多くの人を幸せにするよりも、権力を集中させて独断する方向に進みがちなことに注意が必要です。

また、レーニンの後を受けたヨシフ・スターリンが苛烈な独裁者となったように、創始者はそれほどでなくても後を継いだ人間が独裁化する可能性もあります。


民主主義が力を失っているときに、独裁国家は戦争を起こす


それは、アメリカを筆頭とする強力な民主主義が弱っている間が、独裁国家によってはチャンスだからです。

また、独裁者は唯一無二であるため、国内でそれ以外の発想を持つ人間を許容しません。
従って、国内に友人などいません。
独裁者は他国の独裁者を友人とするほかないのです。

浮気を繰り返してきた父親が、娘を極度に心配するのは、自分自身を知っていて男性をそういうものだと思っているからです。
同じように、独裁のために、多くの人を排斥して権力を勝ち取った独裁者は基本的に自分以外を信じることが出来ません。

プーチン氏が、トランプ氏を支持していたのは、トランプ氏が自身の発想や支持者を除いて排斥的で、選挙で敗北した後、議会の襲撃を煽ったように、民主主義を軽視する思考を持ち合わせていることを見抜いていたからです。
とはいえ、独裁者同士の友情は長く続きません。
なぜなら、お互いを信用できないからです。
利害が一致し無くなれば、隙をついてお互いの食い合いを始めます。

それこそが、弱った民主主義が反撃するチャンスとなるかもしれません。

隣り合う中国とロシアも然りです。