日本株がなぜ好調なのか

ここ最近、一時期「岸田ショック」と言われていたのがウソのように、日本株が強い状態が続いています。
今回、どうしてそうなったのか考察していこうと思います。


【❶ウォーレン・バフェット氏の日本株推し】


2023年4月、バフェット氏は腹心のグレッグ・アベル氏と共に来日し、日本の投資先である5大商社(伊藤忠商事・三菱商事・住友商事・丸紅・三井物産)のトップと次々に会談しました。
そして、その事をのちにこう話しています。
「どの企業のオーナーもクレバーだった。私は全てを彼らに投資しながら、今後も日本と良好な関係を維持したい。」と日本の可能性に言及したのです。
このことをBBCなどは、<日本には無限の可能性がある>と紹介しました。

一方で、中国放送もバフェット氏を招待して、「中国には投資しないのか?」と何度も尋ねましたが、その答えは現時点では「NO」というハッキリしたものでした。
放送の中で、キャスターが「アジアで中国は既に日本よりも優れているのになぜなのか?」とかなり詰め寄っていましたが、それに対するバフェット氏の答えは一切ぶれませんでした。

バフェット氏は「中国の外交姿勢や政治体制は、平等ではなく、日本のように開かれていない。」と、現状中国に投資する意思がないことを何度も明確に回答していました。

つまり、日本の市場と比べて、長期間にわたって投資するには中国の市場には信頼性が欠けている、という烙印を押していたのです。

実際に、バークシャーハサウェイのポートフォリオでは、日本株は米国株に次ぐ2位であり、米国株を除けば圧倒的です。
また、バフェット氏が米国以外の株を明確に推すことは稀であり、そのことが、より今回の発言に重みを与えています。

そして、これらの力強い発言は、海外の投資家を大いに刺激したのです。


【❷円安と海外から見た視点】


今回の株高に「円安」が影響しているのは間違いありません。

しかし、私が思う「円安の影響」とは、一般的に日本人が思う「円安によって海外にモノが売れやすくなって、企業の業績が伸びる。」という理由だけでは不十分だと考えています。

無論、輸出関連企業の儲けが伸びるのは、その通りなのですが、ここはひとつ自分が外国人の立場に立って、日本株を物色する、ということを想像してみてください。

円安である。ということは、日本のモノだけでなく、株も安く買えるということです。」

2023年6月11日現在、ドル円相場は1ドル140円前後で推移しており、2年前と比較して約2~30円ほど円安に傾いています。
つまり、日本株をそれだけ割安に購入することが出来るのです。

しかし、それなら半年前の1ドル=150円くらいだった時に買ったほうが良かったわけですが、今回の株高は、【❶ウォーレンバフェット氏の日本株推し】の効果もあって、海外からより一層日本株に注目が集まっていると考えることが出来ます。


【❸数十年ぶりの大幅な賃上げ】


今春闘では、ある程度の格差や不満が残る結果になったものの、日本全体でここ数十年なかった規模の賃上げが達成されました。

普通に考えると、賃上げすると、日本の企業の純利益が下がるから、株が安くなりそうなものですが、そうならなかったのには理由があると思います。

それは日本全体が大きく賃上げをしたからです。

これは非常に単純な構図です。
アメリカでは、ここ20年ほどで労働者の賃金は倍になり、商品やサービスの価格も倍になり、そして、株価も倍になりました。
それぞれ、利上げや利下げの影響があり、綺麗に比例してはいないものの、年数が経過すると、結局そういう形に収束していることが分かります。

従って、日本の労働者の賃金が上がるということは、商品やサービス価格の上昇に耐えられるようになり、株価もそれに合わせて上昇する余地が生まれたのです。

仮に、限られた企業が大きく賃上げする程度だったなら、日本の株価は逆に下がったかもしれません。
全体が大きな賃上げをしたことが非常に重要なのです。

それによって、日本は人材に投資する姿勢を内外にアピールすることが出来ましたし、賃金が増えたため、商品価格のインフレが起こっても、労働者はそれに耐えて消費することが出来るようになりました。
逆に賃上げなしで、商品価格のみが上がってしまえば、すぐに内需は衰えて、売り上げが落ち、企業業績にも悪影響が出ますよね。
つまり、賃上げによって内需の持続性が担保されたことが株高に繋がっているわけです。


<まとめ>


今回の円安と春闘、それに伴う賃上げによって、日本経済は復活を遂げる契機になった可能性があります。
しかし、問題は来年以降で、持続的な賃上げが可能かどうか、が、今後の日本の株価の行方に大きく影響してくるでしょう。
今までの、利益剰余金(内部留保)を過剰に貯めこむ企業姿勢が復活すると、いくら円安であっても、国民の消費が落ち込んでいき、結局デフレに逆戻りして、株価も低迷することになるでしょう。

仮に、賃上げ傾向が今後も継続していくなら、戦争や地震など、想定される様々な巨大な災害が起こらない限り、日本の株価は今後上昇していくことが見込まれます。
一方で、アメリカはすでに利上げの影響から、景気が悪化してきており、今年の終わりから、来年にかけて大きなクラッシュを迎えるのではないかと、私は予想しています。
そうなった時、日本の真の底力が試されると思っています。