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経団連は去る2022年5月20日、
「業績がコロナ前の基準を回復した企業」の今年の春闘賃上げ率が3.02%だった
と発表しました。
これは昨年11月、岸田首相の「今回の春闘では、3%超の賃上げを期待する。」という発言を受けての数字とも言われています。
では、具体的にこの数字がどういう意味を持つのか考えてみましょう。
【なぜ、賃上げ目標は3%だったのか?】
なぜ、2%でもなく、5%でもなく、3%なのでしょうか?
これは恐らく、政府日銀の掲げるインフレ目標が2%であり、これを仮に達成してしまった場合、
最低でも3%は賃上げがないと、税金などもろもろを差し引いたうえで国民生活が豊かになったとは言えないこと。
そして、企業の努力でなんとか達成可能と思われるギリギリのラインを3%と見積もったからではないかと思われます。
【賃上げ3.02%は優良誤認か?】
「業績がコロナ前の基準を回復した企業」という言葉、去年までは入っていません。
では、その集計に回答して統計に参加した企業は何社あるのでしょうか。
答えは
26社
です。
そして、その26社の合計社員数は約15万人です。
1社あたり平均約5759人の社員を抱える大企業ですね。
ここで考えて頂きたいのは、日本の上場株式会社に絞っても、3824社(2022年4月7日)存在します。
更に日本の労働人口は、約6907万人(2021年)であり、それらの人々全てが各家庭の生活を支えています。
私が言いたいのは、経団連に所属する上位たった26社の平均が賃上げ3.02%であり、
労働人口6907万人に対して、上位たった15万人に絞った統計でこの数字が出ている
という事実です。
26/3824社(上場企業対比)
15万/6907万(日本全労働人口対比)
最後に、「業績がコロナ前の基準を回復した企業」という枕詞が入っている奇妙さに気づかなくてはならないでしょう。
【例年と同じ基準ならどうなのか】
経団連が行なった調査は21業種の252社が対象であり、そのうち回答があったのが合計81社となります。
その81社の賃上げ平均は2.27%です。
この数字自体は、昨年のコロナ禍では、賃上げ率1.87%でしたので、悪くないようにも思えます。
しかし、対象が81社に増えたことで、一気に賃上げ率2.27%まで(3.02%から0.75%も)落ちたということは、
対象が拡大すればするほど賃上げ率は下がっていくと考えてほぼ間違いありません。
また、コロナ禍からのリバウンドがあっても、これくらいにとどまっているとも考えられます。
さらに、回答しなかった会社が171社あったということは、回答してしまうと平均を押し下げてしまうからではないか、とも考えられます。
【労働者全てが3%上がってはじめて、インフレに対抗できる】
4月の消費者物価指数は2.1%
でした。
これはつまり、月間ではインフレ率が2%を超えたことを意味します。
では、インフレは国民生活のどこまで影響を及ぼすかというと、労働人口約6907万人全てに対してです。
すなわち、国民約1億2000万人全てに対して影響を及ぼします。
つまり、上位15万人が賃上げ率3.02%だったとしても、その統計にどれだけの意味があるのか、ということです。
意味がない、とは言いません。
ただ、この情報に触れた人の中には、
「3.02%の賃上げ率だった」
ということのみに着目して、その数字の実態がどうなのか気づかずに、ただただ数字だけを見て、よかった、と思う人がいるのではないかと、心配です。
※まとめ
私がこの数字を見て気になったのは、良く見せかけようとして作られた数字なんじゃないか、という1点です。
「業績がコロナ前の基準を回復した企業」26社に絞られているというのが、引っかかります。
つまり、サプリメントとかでよくある優良誤認を消費者にさせるのに似てて、それに対して、何か胸がモヤモヤする感覚がありました。
そこで、数字を改めて掘り起こして、比較検討してみた結果が今回の記事になります。
今回、私が改めて提示した数字を見て、「いやいや、それでも予想以上に頑張ってるよ!」とか「いいんじゃないかな。」と思う人がいても、それはそれでいいと思うんです。
賃上げがしっかりされている実感がその人やその人の周囲にはあって、幸せを感じるなら、あながち間違ってもいないでしょう。
ただ、インフレが顕著になる中、多くに労働者にとって、そうは言えないんじゃないかな?というのが、私の感覚です。
皆さんはどう思われますか?
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