ビットコインの神隠し


前回の項目で、ビットコインを含む暗号資産の抱える問題点について書きましたが、今回はビットコインの神隠しについて書いていこうと思います。


【ビットコインの神隠しとは?】


ビットコインは発行上限枚数が2100万BTCであることを根拠に、価格が上昇してきた側面があります。
ですが、実はこの発行上限枚数が大きな障害となる可能性があります。

皆さんは、ビットコインがこの世から喪失してしまう場合があることをご存じでしょうか。

今まで、様々な暗号資産をめぐる窃盗事件がありましたが、それらはあくまで流出であって喪失ではありませんでした。
つまり、取引所からビットコインが盗まれたとしても、盗んだ側はそのコインを保持しているので、コイン自体が無くなった訳ではありません。

しかし、仮にビットコインの保管場所のパスワードを知っている唯一の人物が誰にもパスワードを告げることなく死亡してしまった場合や、取引所とは別の場所にそのデータを保管しており、パスワードを完全に忘却してしまった場合などは、事実上ビットコインはこの世から喪失してしまうことになります。(例えば、ビットコインの生みの親であるサトシ・ナカモト氏が所有するビットコインはナカモト氏本人によってマイニングされたあと、2021年現在も一度も取引された形跡がないと言われており、つまりは取引所を一度も介さない状態で保管されていることになります。)

これが現実世界の紙幣であれば、汚損したり喪失した紙幣は中央銀行がただちに補填すればよいだけなのですが、ビットコインの場合は、予め発行上限枚数が決まっていますので、事実上喪失したからといってただちにその分を補填すると、万一喪失したビットコインをなんらかの形でサルベージできた場合に、発行上限枚数に矛盾が生じるため、出来ません。

「え?でも、そうなったらより希少性が増すから、価値が上がるんじゃないの?」

と疑問に思われた方もいるでしょうが、ビットコインの総量が減ってしまうということは、本来のビットコインに課せられた使命である流通貨幣としての安定性や信頼性を失うことにつながります。

極端な話、今後も喪失が続いて、最終的に1BTCしかこの世に存在しなくなったら、もうそれは通貨ではないですよね。

また、仮にビットコインを何らかの方法で増やすことが出来たとしても、それは発行上限枚数が決まっているという希少性や前提と矛盾しますから、これも簡単には出来ません。

で、あれば、可能性としては、0.001BTCとか単位を細かくした上でデノミネーションを改めて行なうくらいですが、残念ながらビットコインの利点である特定の人物や国家の裏付けを受けずに、みんなで管理するということに矛盾し、デノミネーションを行なうにしても誰も行なうことは出来ないでしょう。仮にそうなったとしたら、それはすでにその音頭を取った人物や集団の支配を受けている通貨に成り下がってしまったことになり、ビットコインは【特定の集団の支配を受けないみんなの通貨】というアイデンティティを失ってしまいます。

デノミネーションが出来ないとすると、小数点以下のBTCで永遠に取引することになりますが、扱いがメンドクサイだけで、送金手数料がかからないという利点を除けば、普通の通貨で十分ということになってしまいますよね。

従って、ビットコインに代表される発行上限枚数が決まっている暗号資産は、元々決まっている発行上限枚数以上には新規に発行されないという、希少性と価格上昇に繋がる事実そのものが、安定した流通貨幣としての側面と大いに矛盾しているので、何らかのきっかけで矛盾が顕在化すると、価値が一気に下落する危険性もあります。

ただし、それが数か月後なのか、数年後なのかあるいはもっと先なのかは私にも分かりませんし、それまで価格が上がっていく可能性も十分にあります。あくまでここに書いたことは私個人の予想ですので、頭の片隅に置いておく程度でお願いします。