断言:トリクルダウンはない

トリクルダウン

という言葉を覚えていますでしょうか。

アベノミクス時に、

「富める人がさらに富めば、雫がしたたり落ちるように、下にもその富が浸透して豊かになる。」

と言っていたことが、トリクルダウン理論の大まかな解釈になります。

それを踏まえて、

なぜトリクルダウンが起こり得ないのか

について、考えてみましょう。


【富める人とそうでない人の圧倒的人数の差】


まず、富める人の定義をザックリと決めます。

ここでは、基本、配当のある大企業の社長と持ち株を持っている幹部を富める人と定義します。

下請けや中小企業の社長なども富める人に入る場合がありますが、薄給で社員のために日々奔走しているような社長もいますので、そこは割り引いて考えます。

このように考えた場合、

日本の2021年の労働人口は約6907万人です。この平均年収を約400万円と定義します。

日本の2021年の企業総数は約425万社です。

うち、個人企業は約220万社です。

個人企業は、他会社社長の個人資産管理会社であったり、ゴーストカンパニーも含まれますし、富豪と呼べる人は極々一部ですので、これを省きます。

残り、205万社のうち、社員数10名未満の企業は約75%にあたりますので、社員数10名以上の会社に絞ると、残り25%ということで、約50万社程度となります。

更に大企業に絞ると、全体の0.3%の約1.2万社、上場企業に至っては3824社(2022/4/7現在)となります。

継続的に配当を出している企業となるともっと少なくなります。

とまあ、企業の数だけ考えると、たくさんありますが、

内訳を詳しく見ていくと、本当に継続的に大きな収入が見込めるのは、ごく一部だということが分かると思います。

色々とバランスをとって考えても(社長以外にも高収入な職種や地主、取締役などの幹部を含めた上で、経営が厳しい会社の経営者などを省く)

多くても富豪は数十万人だということが分かります。この富豪の平均年収を約1億円(資産を1億持っているのではなく、年収が1億)と定義します。

つまり、年収400万円の6907万人の労働者に対して、年収1億円の数十万人の富豪。

本当にザックリではありますが、富豪1人(平均年収1億円くらい)当たり、労働者(平均年収400万くらい)が100人程度はいるという計算が成り立ちます。


【1人に100人分の消費が出来るのか】


ココで考えるべきは、1人が果たして100人分の消費が出来るのか、ということです。

例えば、1人の富豪が余分に100台の軽自動車を買うのか、100人分の米を食べるのか、ということです。

しませんよね。

いえ、確かに金額ベースで、高級な腕時計とか、高級車とか、アクセサリーを買うかもしれません。

しかし、庶民はそれでは儲かりません。


【仮に富豪が大量消費したとしても…】


とはいえ、富豪だって高級店で消費してるだけじゃないだろ、という方もいると思うので、それについてお答えします。

仮に、富豪が庶民の店で大量消費したとしますが、その富はその店の経営者に行きます。

A社の社長がB社で買い物>B社と社長は儲かるが、従業員の賃金は上がらない。

B社の社長がC社で買い物>C社と社長は儲かるが、従業員の賃金は上がらない。

C社の社長がA社で買い物>A社と社長は儲かるが、従業員の賃金は上がらない。

(※賃金が全く上がらないということではなく、正社員か派遣かということも含め、引退世代のほうが賃金が上で、若い世代の賃金が低く抑えられている場合は、平均賃金が下がったとみなします。)

従業員は貧乏なままで、トリクルダウンなんて起こっていません。

もし、本当にトリクルダウンが起こっているなら、実質賃金の低下なんて起こるはずがないんです。

というのも、物価や税金が上がる以上に賃金がどんどん上がってないとトリクルダウンとは言えないからです。

そう、ずっと金持ちの間で永久にグルグルお金が回っているだけです。


【株主としての私の考え】


私は株主ですから、配当が大きいことはありがたいことだとは思います。

一方で、会社の利益が配当に大きく回ることの前提として、会社の将来への投資や従業員の賃金がカットされ、会社の伸びが鈍化したり、子育てに不安を覚えたり、それによって日本の少子化が加速することをいいことだとは思えません。

人口の増減はGDPに直接的に影響し、その国の人々が増えるということは消費が増え、企業が儲かるということに繋がります。

従って、人口が減っている国の株は基本、買われないのです。

日本の株がさえないのは、そういった側面もあります。

アメリカの株が強いのは、英語が世界で通用し、世界人口が増えているからです。

1人の赤ちゃんが大人に育つまで、親はたくさんその子にお金を使いますよね、そして、その子は新しい労働者になります。

更にその波が、新しい産業や企業の業績の上乗せに繋がっていきます。

つまり、株価が上がりやすくなります。

話は変わりますが、会社の一番の大株主は誰か、社長であり、幹部であったり、外資のファンドですよね。

そういう人が更に儲ける目的で、配当を上げてきた側面があります。

元々、アベノミクス時に政権与党であった自民党の支持層は経営者が多いです。

従って、政治献金などの兼ね合いもあり、経営者の意向が反映されやすくなると思います。

そう、トリクルダウンという言葉も、よくよく考えると経営者がより富めるための、方便なのです。

もし、あなたが経営者であった場合、自分が黙っていれば得をする政策を誰かが提言したとして、わざわざ止めたりはしないでしょう。

そういう流れがあって、トリクルダウンが起こる、と言われてきた現実を考えなければなりません。

私は、トリクルダウンはこれから起こるというような希望的観測に従うのではなく、起こってこなかった現実を見据えて、

起こらない以上どうすれば、私たち庶民が幸せになれるのか、他人の考えに頼らずにそれを達成する方法を探し続けることが大切だと思います。

あえて厳しい言い方をすれば、他人のささやく甘い幻想に心を委ねるということは、考えることを放棄することであり、非常に楽です。

しかし、それは生殺与奪の権を相手に握られているのと同義である、ということです。

自分たちにとって、権力を持つ人間が甘いことを言っているとき、その裏側に何があるのか疑問を持たなくてはいけません。

常に自分にとっての最良の幸せとは何かを探し続け、それに向けて1歩1歩行動することが大切ではないでしょうか。


【トリクルダウンの恩恵があった一部の人々とは】


それは

株主

です。

それも大企業の株主で、アベノミクス時の初期から後期にかけて株を持っていた人たちです。

株主がずるいとか、いいとか悪いではなく、

もし、そうであるならどうしてそうなったのか、今後新しい流れが来た時にどう対処すべきか、

アベノミクスが終わった難しい相場でどう生き抜いていくのか、すでに現実で起こった過去を照らして、それを元に未来を予測し続けなければいけません。

そして、今後新しい流れが来た時、いや、まさに今、その波が来ているのだとしたら、それを鋭く察知して、うまく波に乗れるようにしたいものですね。